皮膚外科・形成外科は、身体表面の異常や変形、欠損などに対し、その機能や形態の回復を目指す診療科です。単に病変を取り除くだけでなく、術後の見た目や傷痕の仕上がりにも配慮し、できる限り目立たないように仕上げることを大切にしています。
当院で対応する疾患
粉瘤(アテローム)
粉瘤は、皮膚の下に袋のようなものができ、その中に角質や皮脂といった老廃物がたまることで生じる良性のしこりです。放っておくと少しずつ大きくなり、時には中央に黒い点が見えることもあります。痛みは伴わないことが多いですが、細菌感染を起こすと赤く腫れて強い痛みを伴うことがあります。粉瘤は自然に治ることはなく、根本的に治すためには袋ごと取り除く手術が必要です。感染や炎症がない場合は、局所麻酔をして比較的短時間で切除が可能です。既に腫れて膿がたまっている場合には、まず切開をして膿を出し、炎症を落ち着かせたうえで、後日あらためて完全に取り除く治療を行うことが一般的です。
ほくろ
ほくろは、皮膚に生じるできもの(皮膚腫瘍)の一種で、医学的には「色素性母斑」や「単純黒子」と呼ばれます。皮膚表面に現れる色素斑として確認されるもので、大きさは0.1mm程度の小さなものから、数十cmに達するものまで様々です。
色調や形状にも幅があり、薄い褐色から黒色まで、盛り上がっているものや平らなものなど多様なタイプが存在します。なかでも非常に大きなものは「巨大色素性母斑」と呼ばれ、悪性化するリスクがあるため、予防的に切除が勧められることがあります。
診断の結果、腫瘍としての評価が必要と判断された場合には、保険適用でレーザーや手術が可能です。気になるほくろがある場合は、お早めにご相談ください。皮膚科専門医が専門的な知識に基づいて、診断、適切な治療をご提案します。
いぼ
皮膚にできる小さな盛り上がりのあるできもののことです。ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが皮膚の傷から侵入して感染することで起こるいぼには、尋常性疣贅と扁平疣贅の頻度が高いです。尋常性疣贅は手足の指、手のひら、足の裏にできることが多く、扁平疣贅は顔や手の甲、膝下にできることが多いです。液体窒素での治療がメインとなりますが、回数がかかり毎回強い痛みを伴うため、当院では保険適用でレーザーや手術の併用もお勧めしております。他に、顔や首などに出現する老人性のいぼ(脂漏性角化症、軟性線維腫)も同様にレーザーや手術を行っております。
巻き爪・陥入爪
巻き爪・陥入爪は、爪の角が皮膚に食い込み、痛みや炎症を引き起こす状態です。巻き爪は爪全体が巻いてしまうことで、歩行時や靴による圧迫で痛みが生じやすくなります。陥入爪は爪の端が皮膚に刺さり、赤みや腫れ、化膿を伴うこともあります。原因には、爪の切り方の不適切さ、靴の圧迫、遺伝的要因、外傷などがあり、症状が進行すると慢性的な痛みや感染のリスクが高まります。
テーピング
痛みを和らげる保存療法の一つです。爪や皮膚に特殊なテープを貼り、爪の巻きを矯正したり、爪が皮膚に食い込むのを防ぐことで、炎症や痛みの軽減を図ります。軽度から中等度の巻き爪に有効で、正しい方法で継続することで、爪の形状を徐々に整える効果が期待できます。
手術
保存療法で改善しない重度の巻き爪や陥入爪に対して行われる治療法です。局所麻酔下で爪の一部を切除したり、爪母や爪根を処置することで、再発を防ぎつつ痛みを根本的に解消します。
巻き爪マイスター
巻き爪マイスターは、特殊なワイヤーや矯正器具を用いて爪の形状を整える矯正治療です。爪にワイヤーを装着することで、爪が皮膚に食い込む力を軽減し、痛みを和らげながら自然に爪の巻きを改善します。手術を行わずに治療できるため、日常生活への影響が少なく、軽度から中等度の巻き爪に適しています。定期的な調整で徐々に爪の形を整え、再発予防にも役立ちます。
リネイルゲル
巻き爪矯正専用の樹脂ゲルを用いて爪の形状を整える治療法です。爪にゲルを塗布して硬化させることで、爪の巻きを抑え、皮膚への圧迫を軽減します。痛みを伴わずに矯正できるため、日常生活や仕事への支障が少ないのが特徴です。軽度から中等度の巻き爪に有効で、爪の形状を徐々に改善しつつ、再発予防にもつながります。
やけど、けが
けがややけど(火傷・熱傷)は、初期の処置が予後に大きく影響するため、早期かつ適切な治療が重要です。当院では、切り傷に対する縫合処置をはじめ、やけどの重症度に応じた診断・治療を行っており、必要に応じて外科的な処置も実施しています。なお、重症の外傷や深いやけどが認められる場合には、専門的な治療が可能な提携医療機関をご紹介いたします。
擦り傷の治療
擦り傷は、初期の適切な対応によって、傷痕の目立ちにくい治癒が期待できます。当院では、乾燥を防ぐ特殊な保護剤を創部に使用し、滲出液に含まれる成長因子やサイトカインの働きで自然治癒を促す「湿潤療法」を採用しています。状況に応じて、「消毒を行わない」「ガーゼを使用しない」など、痛みを抑えつつ治癒を早める最新の創傷ケアを取り入れた処置を行っています。また、傷口に砂や泥などの異物が入り込んでいる場合は、感染予防のため局所麻酔を使用して洗浄・異物除去を行うことがあります。
切り傷の治療
切り傷の縫合には、形成外科の専門的な技術が求められます。当院では、溶ける糸による「真皮縫合」を行い、内部からしっかりと傷を固定します。この糸は約6ヶ月で自然に吸収されますが、最も傷の反応が強い受傷後3ヶ月間にわたってしっかりと組織を支える役割を果たします。表面の皮膚は、細く目立ちにくい糸を使って丁寧に縫合し、糸の痕が残らないよう、幅を狭くして細かく縫う工夫を施しています。抜糸は通常5〜7日程度で行い、傷痕の仕上がりに配慮した処置を徹底しています。
やけどの治療
やけどは、損傷の深さによって「1度・2度・3度」に分類されます。1度または浅い2度のやけどであれば、通常2週間以内に自然に皮膚が再生します。一方で、深い2度や3度のやけどは治癒までに数週間から数ヶ月を要し、ケロイドや拘縮(ひきつれ)などの後遺症を残すことがあります。場合によっては、皮膚移植(植皮術)などの外科的治療が必要となるケースもあります。
なお、2度のやけどが浅いか深いかの判断は非常に難しいため、まずは軟膏による保存的治療を2週間程度行い、傷の治り具合を経過観察します。治癒の進行が遅い場合は深いやけどと判断し、手術を視野に入れた対応を行います。
